消化器症状があるにも拘らず、内視鏡検査などで器質的異常を認めないものを機能性消化管疾患と呼び、胃食道逆流症、機能性ディスペプシア、過敏性腸症候群などが代表です。
これらの疾患は、もちろん生命に関るものではありませんが、日常生活の質(QOL)を極端に落とすことが知られています。
機能性ディスペプシアー器質的疾患がないにもかかわらず上腹部に消化器症状が生じる疾患群ーが注目されています。もたれを中心とする食後愁訴症候群と痛みを中心とする心窩部痛症候群に分けられます。以下にローマⅣ基準での定義を示します。
機能性ディスペプシア(FD)の診断基準
下記の症状のいずれかが診断の少なくとも6か月以上前に始まり、かつ直近の3か月間に上記症状がある。
及び症状を説明しうる器質的疾患はない。
食後愁訴症候群(PDS)の診断基準
少なくとも週に3日、次の1-2のいずれか1つか2つを満たす。
心窩部痛症候群(EPS)の診断基準
少なくとも週に1日、次の1-2のいずれか1つか2つを満たす。
過敏性腸症候群:通勤、通学中に急におなかが痛くなってトイレに駆け込み、排便が終わると腹痛は消失するという経験を繰り返すのが過敏性腸症候群です。直腸粘膜の過敏性が証明されていますが、中枢の機能障害も指摘されています。
過敏性腸症候群の国際的な診断基準RomeⅣを示します(表1)。
(表1) IBSのRomeⅣ診断基準 |
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最近3ヶ月間、月に4日以上腹痛が繰り返し起こり、次の項目の2つ以上があること。
期間としては6ヶ月以上前から症状があり、最近3ヶ月間は上記基準をみたすこと |
また、便の形状とその頻度から便秘型、下痢型、混合型、分類不能型に分類されます(表2)。
(表2) IBSの分類(RomeⅣ) | |
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1.便秘型IBS(IBS-C): | 硬便または兎糞状便が25%以上あり、軟便(泥状便)または水様便が25%未満のもの |
2.下痢型IBS(IBS-D): | 軟便(泥状便)または水様便が25%以上あり、硬便または兎糞状便が25%未満のもの |
3.混合型IBS(IBS-M): | 硬便または兎糞状便が25%以上あり、軟便(泥状便)または水様便も25%以上のもの |
4.分類不能型IBS: | 便性状異常の基準がIBS-C,D,Mのいずれも満たさないもの |
治療には、大腸の蠕動を調節する薬、便の形状を改善する薬、抗不安薬などを組み合わせて使用します。